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志望理由書の例文をそのまま使ってはいけない理由と、正しい参考の仕方

志望理由書の例文、と検索したくなる気持ちはよく分かります。白紙を前に、何かお手本が欲しい。この記事はその気持ちに応えますが、例文集ではありません。例文をそのまま使った書類がどこで崩れるか、そして例文から何を盗み、何を盗んではいけないかを、BEFORE/AFTERの文例分析で解説します。※文例はすべて指導内容をもとにした架空のものです。

この記事の要点
  • 例文から盗んでいいのは構造だけ。言葉と経験を借りた書類は、面接の深掘りで必ず崩れる
  • 弱い文例と強い文例の差は、文章力ではなく、固有名詞と因果の一本線
  • 例文を探す時間を、自分の経験の棚卸しに使う方が、確実に良い書類にたどり着く

先に結論。例文の言葉は、あなたを守ってくれない

例文をベースに、大学名と部活名だけ差し替えた志望理由書。書類の段階では、それらしく見えるかもしれません。問題は、総合型選抜には面接があることです。志望理由書の記事面接の記事で繰り返し書いてきた通り、面接官は書類の内容を一段深く掘ります。そのとき具体的には? なぜそう考えたの?

借りた言葉には、掘られたときに出てくる細部がありません。書類の言葉は流暢なのに、口頭の説明が急に浅くなる。このギャップは、面接官の側からははっきり見えます。例文の言葉は、提出までは助けてくれますが、選考の本番であなたを守ってはくれないのです。

文例分析。同じ素材でも、これだけ変わる

では、強い書類と弱い書類は何が違うのか。架空の文例で比較します。素材は同じ、部活動での経験です。

BEFORE(弱い例)
私は高校でバスケットボール部に所属し、チームワークの大切さを学びました。この経験を活かし、貴学の経営学部で組織について学び、将来は社会に貢献できる人材になりたいと考え、志望いたしました。

一見、整った文章です。しかし、読み手には何も残りません。理由を分解します。

  • 固有の情報がゼロ この文は、日本中のバスケ部員の誰が書いても成立します。あなたである必要がどこにもない
  • 因果が飛んでいる チームワークの大切さ→経営学部、の間の論理がつながっていません。なぜ協働の実感が、経営学という学問への関心になるのか
  • 将来像が空 社会に貢献できる人材、は何も言っていないのと同じです
AFTER(強い例)
バスケットボール部で、私は控え選手のモチベーション低下という問題に直面しました。声かけを工夫しても効果がなく、原因を探るために部員10人に聞き取りをしたところ、練習メニューが試合に出る前提で組まれており、控え選手の成長実感が設計されていないことに気づきました。役割ごとに目標を分けたメニューを顧問に提案し、翌月から控え組の練習参加率が目に見えて変わりました。この経験から、人のやる気は精神論ではなく仕組みで変わる、という確信を持ち、組織の設計を科学する経営学、特に貴学部の◯◯教授が研究されている組織行動論を学びたいと考えています。

文章がうまいから強いのではありません。聞き取りをした、10人、メニューの構造に気づいた、提案したという固有の行動があり、経験→気づき→学問への関心が一本の因果でつながっている。そして、この書類の持ち主は、面接でどれだけ掘られても答えられます。すべて本人の記憶の中にある話だからです。

指導現場の視点
AFTERの文例を読んで、自分にはこんな劇的な経験はない、と感じたかもしれません。ここが一番大事なところです。この文例の経験は、劇的ではありません。部活で控えの士気が下がる。どこにでもある出来事です。差は経験の希少さではなく、経験をどれだけ掘ったかにあります。聞き取りをした10人という数字も、気づきの中身も、掘る過程で言葉になったものです。つまりAFTERは、特別な人の書類ではなく、普通の経験を掘った人の書類。例文探しの旅を続けるより、自分の経験を掘る作業(棚卸しの記事参照)を始める方が、この書類には早くたどり着けます。

例文から盗んでいいもの、いけないもの

盗んでいい(構造)盗んではいけない(中身)
経験→気づき→学問→将来、という因果の並べ方エピソードそのもの、感情の表現、決め台詞
固有名詞と数字で具体化する、という方針例文中の固有名詞や数字(当然ですが、事実でないことは書けません)
段落の役割分担、字数の配分言い回し。借りた言い回しは、あなたの口語と乖離して面接で浮きます

例文は、地図の凡例のようなものです。凡例を見て地図の読み方を学ぶのは正しい。凡例をなぞって自分の地図だと言い張るのは、選考の場では通りません。

生成AIで書くのはどうか

正直に触れておきます。いま、生成AIを使えばそれらしい志望理由書は数分で作れます。そして、AIが書いた書類の弱点は、例文の丸写しとまったく同じ場所にあります。細部が本人の記憶にないこと。面接の二問目三問目で、書類と本人の言葉の解像度がずれること。AIは、自分の考えを整理する壁打ち相手としては役立ちますが、経験の代筆者にはなれません。むしろ誰でも整った文章を出せる時代になったからこそ、選考の比重は、文章の整い方から、深掘りに耐える本人の中身へと移っています。

指導現場の視点
添削の現場では、書類を読めば、本人の言葉か借り物かはかなりの精度で分かります。見ているのは文章の巧拙ではなく、感情と行動の解像度の一致です。悔しかった、と書いてある場面の行動が曖昧なら、その悔しさは借り物かもしれない。逆に、感情の言葉が拙くても行動が具体的なら、それは本物です。あなたの書類を強くするのは、美しい言葉ではなく、掘り起こされた事実。例文はその参考書であって、答案用紙ではありません。

まとめ

例文からは構造だけを学び、中身は自分の経験から掘る。書き方の原則は志望理由書の記事、書き出しに迷ったら書き出しの記事、経験の掘り方は実績の記事へ。総合型選抜の全体像は基礎の記事で確認できます。

代表講師 川崎
灯志舎 代表講師
川崎

総合型選抜の個別指導に携わりながら、将来のありたい姿から逆算する「ライフ・ナビゲーション」を軸に指導しています。

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